椎間板ヘルニアの原因とアプローチ

椎間板ヘルニアの原因

椎間板ヘルニアは、椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板の組織が突出し、周囲の神経を圧迫・刺激することで激しい痛みやしびれを引き起こす疾患です。

椎間板は、中心にあるゲル状の髄核と、それを取り囲むコラーゲン線維の層である線維輪で構成されています。また血管がほとんど通っておらず、その栄養供給は周囲の組織からの拡散(しみ込み)によって補われています。つまり、動くことがポンプ作用となり、椎間板への栄養を供給しているということです。

組織の破綻: 加齢や持続的な物理負荷によって線維輪に亀裂が入ると、内部の髄核が外側へ押し出されます。

神経圧迫と炎症:押し出された髄核が神経根(脊髄から分岐する神経の根本)を物理的に圧迫するだけでなく、飛び出た髄核(異物)に対して免疫反応が起こり、炎症が発生します。これが激痛や鋭いしびれの主因です。

椎間板ヘルニアのメカニズム

① 加齢による石灰化で体液循環が低下する

年齢を重ねると、栄養の主要ルートである椎体終板(椎間板の上下に存在)が石灰化し、体液循環(栄養素や水分)が低下します。これにより椎間板の水分が失われ変性が進む原因になります。

② バイオメカニクス(生体力学)による椎間板へのストレス

腰椎椎間板ヘルニア:仙腸関節の可動性低下は、腰椎への荷重バランスを崩し、特定の椎間板(L4/L5、L5/S1)に物理的なストレスを集中させます。

③ 糖化によるコラーゲンの変性

糖質の過剰摂取や高血糖のストレスは、線維輪を構成するコラーゲンを糖化させ、柔軟性を失わせます。

④ 椎間板の合成材料の不足

椎間板をの保水力を保つプロテオグリカンやコラーゲンの合成には、タンパク質(アミノ酸)、ビタミンC、鉄、亜鉛が不可欠です。これらの摂取不足や他で過剰に消費されていると組織の修復・再生が追いつかなくなります。

⑤ 細胞レベルの脱水

椎間板の約80%は水分です。身体の過緊張によって身体の動きが低下したり、癒着による可動制限は、椎間板の脱水に繋がり、クッション機能を低下させます。

椎間板ヘルニアは自然に小さくなる

実はヘルニア自体は、免疫細胞(マクロファージ)の働きによって、自然に縮小・消失するケースがあります。

椎間板の内部にある髄核が線維輪を破って外に飛び出すと、免疫システムはこれを異物とみなします。その結果、免疫細胞が集まり、炎症性サイトカインが放出され、神経周囲で炎症が起こります。免疫細胞が飛び出た組織を貪食することで、ヘルニアの自然退縮が促されます。

マクロファージによる自然吸収メカニズムの医学論文

ヘルニアが縮小する最大の要因が「血管新生」と「マクロファージによる貪食(吸収)」であることを体系的にまとめた、信頼性の高い論文です。

椎間板ヘルニアへのアプローチ

① 神経根周辺の炎症をコントロールできるように身体を整える

椎間板ヘルニアは、加齢とともに誰でも起こりうる現象でここに免疫反応である炎症が加わることで、症状が強く現れるものと考えられます。臨床では、疲労の蓄積とともにヘルニアの症状を発症する人が多いです。これは疲労によりHPA軸が乱れ、免疫反応や炎症をコントロールできなくなっているとも考えられます。

炎症は痛みの原因にもなりますが、身体のを修復するための大切な機能でもあります。身体自身がこの免疫反応や炎症をコントロールできるようになることが大切です。そのためにはまず身体の緊張を緩め、休める環境を作ることが優先されます。

ヘルニアによるしびれや痛みが出ていると、精神的にも不安になります。これがしびれや痛みと合わさることで強いストレスとなり、体力はますます回復できなくなります。

② ファシアの癒着を緩め、神経根への物理的ステレスを軽減する

椎間板ヘルニアになっている身体の状態は、すでに脊柱周辺の筋肉やファシア(筋膜)に負荷がかかり続け、組織の癒着を起こしている可能性があります。この癒着があると、動作時にヘルニア周辺の神経に負担をかけてしまいます。また筋・筋膜や神経の滑走障害を起こし、それが痛みの原因になることもあります。

整体で身体の緊張とファシアを緩めることで、患部であるヘルニアにかかる負担を分散することができます。

③ 椎間板周囲の体液循環を促し、自然退縮をサポートする

HPA軸の乱れが長期で続いている場合、身体はアドレナリン分泌で過緊張になり、椎間板周辺の組織は脱水で体液循環が停滞している可能性があります。

整体で身体の緊張を緩め、HPA軸を整えることで、椎間板周囲の緊張を緩めることができれば、体液循環を促せ、自然退縮をサポートすることも可能です。

  • 出典:Association between chiropractic spinal manipulation and lumbar discectomy in adults with lumbar disc herniation and radiculopathy: retrospective cohort study using United States’ data:2022年に発表された米国の大規模レトロスペクティブコホート研究によると、新たに腰椎椎間板ヘルニアまたは神経根症と診断された患者のうち、カイロプラクティック(CSMT)を受けた群は、受けなかった群に比べて1〜2年以内の外科的手術(椎間板切除術)への移行率が約23〜31%有意に減少したことが示されています。
  • 出典:PubMed:Outcomes from magnetic resonance imaging-confirmed symptomatic cervical disk herniation patients treated with high-velocity, low-amplitude spinal manipulative therapy:MRIで確定診断され、腕の痛みやしびれ(神経根症)を伴う頚椎椎間板ヘルニア患者を対象に、徒手療法(脊椎マニピュレーション)の有効性を追跡調査した有名な論文です。
    データのポイント: スイスの専門チームらによる研究です。MRIで証明された頚椎ヘルニア患者に対し徒手療法を行ったところ、2週間で55.3%、1ヶ月で68.9%、そして3ヶ月後には85.7%の患者が「大幅に改善(Better or Much Better)」したと報告されています。首や腕の痛み、機能障害のスコアが劇的に減少しました。
  • 出典:Chiro.orgによる論文サマリー(BenEliyahu, DJ. JMPT 1996):徒手療法を行った後、実際に再度のMRI(Post-care MRI)を撮影して、ヘルニアが物理的にどのくらい縮小・吸収されたかを視覚的・統計的に追跡した古典的かつ重要な論文です。
    データのポイント:MRIで確認された椎間板ヘルニア(頚椎および腰椎)の患者27名に、徒手療法やリハビリを組み合わせた保存療法を行いました。治療後のMRIを比較したところ、63%の患者でヘルニアのサイズが縮小、または完全に自然吸収(消失)していることが客観的に証明されました。さらに、78%の患者が元の職場に復帰できています。
  • 出典:Chiropractic Science:Improvement in Cervical Disc Herniation Symptoms with Spinal Manipulation:「痛みを強力に抑える注射」と「徒手療法」のどちらが効果的かを比較した、JMPT誌に掲載されたランダム化に近い前向き比較研究です。
    データのポイント:MRIで確定診断された頚椎ヘルニア患者(104名)を、画像誘導下の神経根ブロック注射グループと、徒手療法グループに分けて3ヶ月間追跡しました。急性期の改善率は同等でしたが、発症から4週間以上経った「亜急性・慢性」の患者においては、注射グループの改善率が37.5%だったのに対し、徒手療法グループは78%以上が臨床的に大幅な改善を示しました。

⚠️ 医療機関への受診が必要な場合

次のような症状の場合、整形外科への受診が必要です。

  • 排尿・排便の異常:おしっこが出にくい、尿意・便意が分からない、あるいは漏れてしまう
  • 会陰部(股の間)の感覚異常:サドル(自転車のサドルが触れる部分)周辺が痺れる、感覚が麻痺している
  • 急激な筋力の低下:足首が上に上がらない(下垂足)、スリッパがすぐ脱げる、何もない場所で激しくつまずく

医療機関での安全が確認されたのち、当院の施術を安心してお受けいただけます。まずはご自身の安全を第一に考えた選択をお願いいたします。

整体と医学的メカニズム
この記事の執筆・監修者

初田輝夫

新京橋治療院 院長 初田 輝夫
  • はり師・きゅう師(国家資格)
  • 臨床分子栄養医学研究会認定カウンセラー

新宿医療専門学校 鍼灸学科を卒業後、鍼灸整骨院で臨床経験を積みながら、セミナーにてカイロプラクティック、オステオパシーの技術を学ぶ。2013年に独立し、新京橋治療院を開院。現在は医師主催の分子栄養学セミナーで得た知識をもとに、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を中心に施術を行う。

アトピーや副腎疲労に悩む方へ整体と分子栄養学の両面からアプローチしています。お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。


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