・ステロイドは使い始めるとやめられなくなる
・どんどん効かなくなる
・やめるときのリバウンドが強くなる
このような理由から、ステロイドの使用を拒否する人は多いです。しかし、実際はこのような依存状態に陥ってしまうのはステロイドだけの原因ではありません。
今回はステロイドの依存性を強くするものについて、アトピーの臨床10年以上になる私の見解をお話していこうと思います。
ステロイド外用剤の作用と効果
まずステロイドの作用ですが、次のようなものがあります。
抗炎症作用…炎症を促す物質の産生を抑える
血管収縮…血管収縮により、赤みを抑える
免疫抑制…抗体の産生を抑制し、免疫を低下させる
また純粋にステロイド外用薬のみと保湿剤に混ぜた混合薬が処方される場合があり、混合薬の場合、保湿剤の作用も働きます。
ステロイドのリバウンド(離脱症状)ではこれらの作用が解除され、その反動が肌に現れます。
ステロイドの依存とは
ステロイドの依存には次のような状態があります。
・炎症は落ち着くがやめるとすぐ再燃するのでやめられない
・段々効かなくなり、強いランクを処方される
・最強クラスも効かなくなる
これに加え、やめるときに激しいリバウンドがあるということでしょうか。
ステロイドの依存とは、治療の評価基準が肌の炎症になっているため、塗ることがやめられなくなっている状態のことです。つまり自然に逆らって炎症を抑えようとした結果起こる現象なので、医原病とも言えるのではないでしょうか。
なぜステロイドが効かなくなるのか?
ステロイドが効かなくなるのは日常生活や塗布しているものにより、炎症や痒みが悪化し、薬理効果を上回ってくることだと考えられます。
そして、その要素はステロイド以外ということです。
例えば
・過剰な保湿
・混合薬の保湿剤
・長時間の入浴
・ストレスによる体の過緊張
・細菌の増殖
・適切なスキンケアができていない
これについて詳しく説明していきます。
①過剰な保湿が炎症を強くする
皮膚に炎症がある箇所は腫れて水分が集まっているので、そこには保湿をし続けると腫れが強くなります。本来であればこの段階で浸出液が出ればストップがかかるのでしょうが、保湿力の強い保湿剤を使っていると角質バリアが強くなり、歯止めが効かなくなります。
赤み、腫れ、痒みがさらに強くなっているので、今まで塗っていたステロイドも効かなくなります。
処方薬内の保湿ならまだしも、加えて市販のアトピーにいいと言われる保湿剤も同時に使う人がいるので、このパターンに陥る人は多いです。
②混合薬の保湿剤が炎症を強くする
混合薬の場合、ステロイドにワセリンやヒルドイドを混ぜたものを処方することがあります。ワセリンは熱をこもらせる、ヒルドイドは水分を集める作用が強いので、炎症のある皮膚にとっては悪化する可能性があります。これらを使う人は悪化しても、ステロイドが合わなかったと思ってしまうのではないでしょうか。
③長時間の入浴
血行を良くする、肌の潤いを高める、汗をかいてデトックスなどの考えで長時間入浴する人がいますが、炎症の肌にとっては悪化させる行為になります。血行を良くするのは悪くないですが、それを毎日続けてしまうと肌は休まりません。入浴による肌の潤い効果も逆に角質をふやかしてしまうので、角質本来の保湿力を低下させてしまいます。すると乾燥を強く感じるようになるので保湿の頻度が増えることになります。
④ストレスによる体の過緊張
アトピーの不快な症状が続くとそれ自体が精神的・肉体的なストレスとなり、体の過緊張が強くなります。すると、痒みや痛みに対し敏感になり症状が悪化します。この状態では今まで効果があったステロイドも効かなくなることがあります。
⑤細菌の増殖
標準治療では「肌は優しく洗いましょう」と言われることが多いですが、この洗い方だと余分な角質や菌を洗い落とすことができず、痒みの原因となる菌が増殖するリスクがあります。本来、菌が増殖すれば免疫が働き、痒みで気づくことができますが、ステロイドで免疫抑制をかけているとそれに気づくことができません。
もし増殖した状態でステロイドをやめると菌に対して免疫反応が一気に働き、激しい炎症が起きます。
⑥適切なスキンケアができていない
標準治療や一般的なアトピーのスキンケアは症状を抑えることが目的なので、どうしても肌が不自然な状態になります。
例えば、肌は優しく手で洗う、入浴後はすぐ保湿するということを繰り返していると、余分な角質が落ちず、保湿力のない角質がどんどん表面に蓄積していきます。すると余計に乾燥の症状が強くなり、さらに保湿が増え、細菌も増殖しやすくなります。
これは合理的に考えればわかることなのですが、症状を抑えることが先行してしまい見落とされています。
ステロイドが効かなくなる原因が依存性を強くしている
ステロイドが効かなくなる6つの原因をお話しましたが、要はこれがステロイドが効かなくなる、やめれなくなる、ランクが上がってしまう原因になります。
もちろん他にも食事、運動、睡眠など大切な要素はありますので、それも忘れてはいけません。
またこれらに気をつけることにより、リバウンドを最小限に抑えることができます。
標準治療をされている方であれば、1つ以上は当てはまる内容なので確認してみてください。
※新薬であるコレクチムも同様で、薬効としては炎症を抑える効果がありますが、塗り続けていると基剤により悪化する可能性があります。
まとめ
今回はステロイドの依存性を強くする原因についてお話しました。これは私が10年以上のアトピーの臨床で得た内容なので、当てはまる人が多いと思います。
ぜひこれらの内容を参考にしていただき、ご自身の肌の状態の分析に役立てていただければと思います。