脱保湿のやり方と成功させるポイント

脱保湿は保湿剤をやめて肌を乾燥させることですが、乾燥させるためには次のことにも気をつけなければいけません。

塗るもの、入浴、運動、汗、肌着、寝具、室温湿度、水分摂取量

これらに注意を払えていないと、かさぶたがふやけてしまい肌は治りません。

脱保湿を成功させるためのポイントをまとめましたので、ぜひ参考にし実践してください。

脱保湿の大前提
なぜ皮膚がふやけるとダメなのか?

脱保湿中、角質がかさぶた(痂皮)になり未熟な皮膚を保護します。この保護により未熟な皮膚は水分を保持することができ、正常なターンオーバーをすることができます。
しかし、かさぶたにはふやけると剥がれやすくなるという弱点があり、もし剥がれてしまうと、その下の未熟な皮膚は空気に晒され、保持している水分が蒸発してしまいます。すると正常にターンオーバーを終えることができず、またかさぶたになってしまいます。

ふやけでこれを繰り返すと治りが悪くなってしまうということです。

さらに皮膚がふやけると角層に溜まっているIL1(インターロイキン1)の働きで皮膚炎を起こしてしまいます。

  • 絆創膏で痒くなる
  • おむつかぶれ
  • 太っていて皮膚と皮膚が重なる場所が痒くなる

これらもふやけが原因で痒みや炎症が起きているということです。

皮膚のふやけは、皮膚の回復、ターンオーバーの正常化を妨げてしまうので常に注意しましょう。

鱗屑と落屑との付き合い方

鱗屑(りんせつ)は角質が白く浮き上がって見えるもので、落屑(らくせつ)は鱗屑が皮膚から剥がれ落ちたものです。

脱保湿直後は大きな鱗屑や落屑が現れることがあります。これは今まで溜まっていた不要な角質が浮き上がってきたものなので、洗顔、洗身で一度しっかり洗い落としてください。

その後に現れる鱗屑はその下の未熟な角質を育てる役割があるので、無理に剥がさないようにし、定期的な洗顔、洗身で不要な鱗屑を洗い落としてください。

鱗屑を乾燥肌だと認識して保湿してしまうと、皮膚の正常な機能を取り戻すことができないので、脱保湿を継続しましょう。

最初に大きかった落屑が小さくなってきたら、脱保湿が順調にできている証です。

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保湿効果のあるものをすべてやめる

保湿剤には、ワセリン、ヒルドイド、化粧水、オイル、乳液、クリームがあり、これらはすべてやめる必要があります。

化粧をやめることに抵抗のある人はいると思いますが、すでに赤み、痒み、浸出液が出ているのであればやめることが必須です。
冠婚葬祭で一時的に化粧が必要なときがあると思いますが、そのときは短時間の使用に留め、すぐ落とすようにしてください。

日焼け止めも保湿になるので、紫外線対策は日傘や帽子で行ってください。どうしても避けられないときだけ単発で使用するのは大丈夫です。また多少の日焼けは肌のターンオーバーを促してくれますし、紫外線はビタミンDを産生してくれるので完璧な紫外線対策は必要ないです。

添加物がダメで無添加やオーガニックの保湿剤ならいいという提案をよく聞きますが、保湿は保湿なので塗るものはすべてやめる必要があります。

薬も保湿になる

最近はステロイド以外の新薬(コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏)も登場していますが、これらの軟膏の基剤にはワセリンが使われているので自動的に保湿効果がついてきます。

実際に使用している方の経過を見ていると、最初は薬効で赤みが引くように見えますが、途中から赤みが強まっていることが多いです。おそらく基剤の保湿効果により、熱がこもる、皮膚が過敏になるなどの保湿依存に陥っているのではないかと思います。

マスクはしない

マスクをしていると呼気で口周りがふやけてしまうので、マスクはしないようにしましょう。

また長年のマスク生活で口周りの皮下組織、結合組織が硬くなり、皮膚が治りづらくなっていることもあります。その場合、口内や皮膚をマッサージして循環をよくする必要があります。

肌着は綿100%

綿素材の肌着は皮膚の湿気を自動で調整してくれるので、基本的に肌着は綿100%を使いましょう。
しかし運動時に綿を着ていると汗で濡れっぱなしになり、角質がふやけてしまうので、運動時はトレーニングウェアを着用しましょう。

また春秋で気温の変化が大きいときは、肌着で調整するのではなく上着で快適な状態をキープしてください。

衣類で蒸れないように

肌を見られたくない人に多いですが、暑い日も長袖を着て、角質が汗でふやけている人がいます。見られたくない気持ちもわかりますが、暑い日は半袖や通気性のいい衣類にしてなるべく皮膚をふやかさないようにしてください。

通気性のいいマットレス

ウレタン素材のマットレスは湿気を通しにくい上、ウレタンとの接触面で熱がこもりやすいので使用を避けたほうがいいです。

一般的な敷布団やファイバー系の通気性がいいものをおすすめします。

エアコンはつけっぱなしにする

就寝時、エアコンの切タイマーを設定してしまうと、エアコンが切れた途端、寝汗をかいてしまいます。エアコンは切タイマーを使わず、つけっぱなしにしてください。

また途中で室温が変わると自律神経が働くことになり、身体が休まりません。

身体を休めるには、暑くも寒くもない一定の環境を作ることが大切です。

肌に接する素材は綿100%で

夏にひんやりする素材の寝具を使う方がいますが、肌に接する素材は綿100%を使用してください。

炎症が強いときは皮膚から水分が飛んでいるので、その湿気を逃がしてあげなければいけません。大判タオルやタオルケットを使ってうまく調節してください。

脱ステ・脱保湿直後のシャワー

脱ステ・脱保湿直後は皮膚を積極的に乾燥させないといけません。

入浴はシャワー3分くらいにしてさっさと浴室から出ましょう。濡れたまま浴室にいるだけでも保湿になってしまいます。

また傷が多い、深い、新鮮なカサブタが付いているときは、シャワーで濡らすのも避けたほうがいいときがありますので、肌をみて判断してください。

入浴で適切に皮膚を洗浄し清潔を保つ

「脱保湿=洗わない」ではありません。
もし脱ステ、脱保湿中、全く洗わないと次のようなデメリットが起きます。

  • 角質が乱れ、乾燥による痒みが増える
  • 表皮の菌が繁殖し、免疫反応が強くなる
  • 肌の血行が悪くなり、皮膚の治りが悪くなる
  • 皮膚が敏感になり、痛みを感じやすくなる
    →さらに洗わなくなり、皮膚の状態が悪化する
  • 皮膚が突っ張り、動かせなくなり、身体全体がこわばる
    →身体がリラックスできず、自律神経が乱れる

実際、これらのデメリットでアトピーが改善しない人が多いです。
これには適切な入浴方法で皮膚を洗う必要があります。この内容についてはまた詳しく説明しますが、それまでこちらの記事を参考にしてください。

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長湯は皮膚をふやかす

長湯(10分以上の湯船)は皮膚をふやかしてしまうので、乾燥優先の時期は避けましょう。また標準治療中でも皮膚が赤い場合は悪化させてしまうので避けたほうがいいでしょう。

<対象者>

赤み・炎症が強い、湿疹・傷が多い、肌が不安定、脱ステ・脱保湿直後

運動以外で長時間の汗はかかないように

例えば汗をかいたほうがいいという情報から、夏、エアコンを付けずに家事をする人がいますが、これはかさぶたをふやかしてしまうのでやめてください。肌が安定するまで快適な室温と湿度で過ごしてください。

運動時は運動のメリットが上回ってくるので、汗を気にする必要はありません。ただそのときはスポーツウェアを着て運動を行うようにしてください。

真夏の外出時は汗だくになってしまいますが、それは仕方ないので諦めましょう。

<対象者>

赤み・炎症が強い、湿疹・傷が多い、肌が不安定、脱ステ・脱保湿直後

積極的に運動をしましょう

慢性炎症、むくみが続いた皮膚は線維化が進み、むくみが抜けづらくなっています。積極的な運動でむくみを解消しましょう。

<対象外の人>

体調が悪い、動く体力がない、寝れてない人

手袋はしない

手に湿疹や傷があるということで、家事をするときにビニールやゴム手袋(以外、手袋)をする人がいます。これは気持ちはわかるのですが、基本的に手袋は使用しないほうがいいです。

手は治る条件が整っていれば、手袋無しで家事をしても治ります。逆に手袋をしても治らないということは、治る条件が整っていない可能性があり、さらに手袋が治りを悪くしていることもあります。

習慣的に手袋をしていると角質はふやけて分厚くなりひび割れます。ひび割れると指は動かしづらくなるので、さらに血行不良で傷の治りが悪くなります。

手袋をするほど手の湿疹に気を使っている人は普段から石鹸で手を洗わないことも多いので、菌が繁殖して痒みの原因になっていることもあります。

手に関しては保護しすぎると治りを悪くしてしまうので、普段からどんどん動かし、気にせず石鹸で手洗いもしてください。痛みや固くて動かせない場合はマッサージをして動かせるようにすることがポイントです。

手袋をどうしてもしなければならないときは、先に綿の手袋をしてからビニールやゴム手袋をしてください。それでも着用時間は短くする必要があります。

水分摂取量をコントロールしましょう

水分摂取量は多すぎても少なすぎてもいけませんし、状況によって量を調整する必要があります。

就寝時、浸出液が出てくるようであれば、試しに夜の水分摂取量を減らしてください。日常生活で浸出液が気にならないのであれば、1.5~2.0リットルの間で調整してください。

また水分と運動量はセットで考えてください。摂った水分を運動で回していくイメージです。


参考文献:田上八郎,「皮膚の医学 ― 肌荒れからアトピー性皮膚炎まで」,中公新書,2013年3月

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