最近、注目されているファシアについて、人体解剖実習をした経験からお話したいと思います。
ファシアとは
ファシアは皮膚、脂肪、筋肉、骨、血管、臓器などを支えるタンパク質でできた線維です。見た目は蜘蛛の糸が密集したような状態に水分を含み、感触はふかふかしています。解剖で皮を剥がすとき、このファシアがプチプチ剥がれる感触があります。
よく話題になる「筋膜」もファシアに含まれますが、実際、解剖してみると筋膜と皮下組織のファシアには明確な境界線があります。
個人的な見解としては、痛みの原因は筋膜よりも皮下組織のファシアにあるのではないかと思います。なぜかと言うと、施術で筋膜までテンションをかけなくても、体はゆるみ、痛みや症状が緩和するからです。以前はこの変化は筋膜がゆるんだからと考えていましたが、今は皮下組織のファシアがゆるんでいるのではないかと考えています。
つまり、体の不調を改善するポイントは、みなさんが想像されている以上に体の浅いところにあるということです。
ファシアを感じてみよう
このファシアの存在は誰でも簡単に感じることができます。
試しに皮膚を指で摘み、ゆっくり引っ張ってみてください。すると抵抗を感じませんか?それは皮下組織と筋肉(筋膜)を繋ぐファシアの硬さです。
次に、前腕の内側と手首の内側の皮を引っ張って、伸び具合を比べてみてください。手首のほうが伸びづらくないですか?
伸びづらいほうが悪い?と考えてしまいそうですが、実はそういうことではありません。体には伸びたほうがいいところ、伸びないほうがいいところと、場所によって必要な硬さを変えています。そうすることで、体は余分な力を使わず、動くことができるんですね。
ファシアはかたくなる(癒着)
怪我をしたとき、その皮下のファシアは癒着を起こし固まります。そのまま怪我した場所を動かさなければ、癒着がなくなることはありません。逆に動かして循環を良くすれば、癒着は解放され動きはスムーズになります。
これは体が環境に適応しようとする能力で、傷だけでなく普段の生活でも起きます。
例えば、
・同じ姿勢で長時間過ごす
・姿勢の悪さ
・ストレスで体に力が入ったまま
・疲れによる体の歪み
これらをきっかけにファシアは硬くなります。ただこれは悪化ではなく、体が環境に適応しようとした結果で、そのほうが体にとって都合がいいからです。
多くの人がこの状態で不自由を感じることなく過ごします。本来であれば体を休めてあげる必要がありますが、そうできない人が多いです。
体にも限度がある
休息なしに、いつまでも快適に生活できるわけではありません。体にも限度があります。ファシアが硬いと、他の関節や筋肉に負担がかかり、痛みや関節炎などを起こします。また血流障害による痛みやコリが現れることもあります。
今まで元気で何も不調を感じなかった人が、いきなり辛い症状を感じ始めたら、それはもう重症です。
ファシアをゆるめる
ファシアはタンパク質の線維で水分を含んでいますが、この水分が常に流動性があるわけではありません。癒着があるところでは水分はゲル状(固体化)になり、ファシアに制限がかかっています。こうなってしまうと運動やストレッチをしてもなかなかゆるんでくれません。
では、どうすればいいのか?
まず、熱めのお風呂で体を温めてください。
これによりゲル化した水分が柔らかくなり、ストレッチしたときにファシアもゆるみやすくなります。このときのストレッチは瞬発的なものではなく、ゆっくりと軽い持続的なものにしてください。
硬い人であれば、ファシアがゆるんで体が軽くなるのを感じるでしょう。
実は当院の施術も、このファシアを意識して施術しています。
ストレッチやマッサージでは感じとれないレベルのファシアをゆるめて、体の歪みを調整しています。また局所の頑固な症状も、このファシアをゆるめると改善することが多いです。
まとめ
いかがだったでしょうか
今まで症状の原因は、神経、関節、筋肉、筋膜などと言われていました。この考えで治療して、効果が出ることもありますが、出ないこともあります。そうしたとき、このファシアに着目して治療すると改善することがよくあります。
お客様自身もファシアを理解することで、症状の原因を理解でき、セルフケア、病院選び、治療院選びの助けになると思いますので、ぜひ考え方に取り入れてみてください。